大英博物館 日本美術コレクション展@東京都美術館

2026年8月19日

この展覧会は相当混むであろうと思い、平日限定の前売券を買っておいた。
当日は少し出遅れ、9時半の開室から30分遅れの到着になってしまった。

入場したが、平日にも関わらず、すでにかなり混雑していた。

この展覧会の目玉は、その昔、奈良県桜井市の談山神社(当時は、多武峰妙楽寺という名前だった)の花鳥間と富士間の四面を飾っていた襖絵が、その後の歴史の流転の中で、日英米に離れ離れになってしまっていたが、今回150年ぶりの再会を果たしたという話である。

NHK青森の特集番組を事前に見てしっかり予習してから出かけた。

「海をこえたふすま絵 奇跡の再会」 英・日・米に離れ離れになっていたふすま絵が150年ぶりに東京で奇跡的に再会。400年前に狩野派の絵師によって描かれたふすま絵の数奇な運命と作品の謎に迫る。 | NHK青森
【NHK】現在、東京都美術館で開催中の大英博物館の日本美術コレクション展。注目の作品のひとつが「ふすま絵」である。英・日・米と離れ離れになっていたものがおよそ150年ぶりに東京で再会を果たした。災害や戦禍を奇跡的に生き延びたこれらのふすま絵…

写真撮影禁止だったが、目玉の襖絵4枚のみは撮影可であったのはありがたかった。
しかし、たくさんの人でこんなアングルでしか撮影出来ない。

まず最初が、大英博物館所蔵の「秋冬花鳥図襖」。

その右側に、青森県中泊町の旧家・宮越家所蔵の「春景花鳥図襖」が展示されている。

この2枚の襖絵が、昔は談山神社の花鳥間で、このようにL字型に連なって置かれていたのだ。

「(秋冬花鳥図襖の)画面の左から右へ、秋から冬へと季節が移ろう。左端には、楓の木の下に佇む雁と芙蓉の花が描かれ、その隣には雪をいただく。さらには葦や笹に縁取られた水辺が広がり、鴨や千鳥が集う。右端には白椿が華麗に花を咲かせている。自然を吉祥的に表した理想化された景観といえる。場面はno.29<春景花鳥図襖>へと続く。」

「(春景花鳥図襖には)no. 28<秋冬花鳥図襖>から続く場面が描かれている。左から紅白の椿、白梅、うぐいす、雪どけ水の奔流と春の兆しが感じられる。場面は一気に満開の桜に包まれ、春爛漫へと季節は推移する。雉子の雛は8羽と子だくさんで、多産への祈りが込められている。金銀の切箔・野毛や砂子は手が込み、画面全体に輝いて夢幻的な雰囲気を生んでいる。」

宮越家の9代当主・宮越正治氏が「春景花鳥図襖」を東京の美術商の競売で購入したのが1922年。
なんと、その翌年にあの関東大震災が起きており、宮越家に購入されて青森に疎開していなければ大震災で焼失してしまっていただろうと思うと運命的なものを感じる。

一方、大英博物館所蔵が「秋冬花鳥図襖」を購入したのは1937年。日本から英国に渡った時点では、「秋冬花鳥図襖」とその反対面に描かれていた「琴棋書画仙人図襖」が一緒だったようだが、その後、反対面の「琴棋書画仙人図襖」は剥がされ、米国シアトルに渡り、1951年にシアトル美術館が購入したという歴史のようだ。

そして、この「名所風俗図襖」(美保松原•清見寺)が、「春景花鳥図襖」の反対側を飾っていた襖絵。この二枚の襖絵は両面とも宮越家所蔵で離れ離れにならずに良かった。

これが、シアトル美術館所蔵の「琴棋書画仙人図襖」。大英博物館所蔵の「秋冬花鳥図襖」の反対側を飾っていた襖絵だ。

今回展示されていたのは、上の4枚で、以下のような位置関係になる。

なかなかゆっくり落ち着いて観ることは出来なかったが、私は宮越家所蔵の「春景花鳥図襖」が明るくウキウキした感じがあって好きだった。
まあ、誰でも季節としては春の方がウキウキすると思うが。

盛り上げ彩色というらしいが、こんな立体的な感じで桜が描かれていた。

金箔の感じがギラギラし過ぎずなんとも美しかった。
雉子も生き生きとしていて、鳴き声が聞こえてきそうな、今にも動きそうな感じだった。

大英博物館所蔵の「秋冬花鳥図襖」と宮越家所蔵の「春景花鳥図襖」が一連の襖絵であることに気付いたのは、狩野派研究の第一人者・山下善也さん。

28歳の時、1987年に開催された大英博物館展で「秋冬花鳥図襖」を見たことがあり、宮越家の「春景花鳥図襖」の画像を見た時に、「あのキラキラだ」と思ったそうである。
そして、2004年9月に二つの襖絵がひとつづきの作品であるとの公式発表に至ったというわけだ。

すごい話だ。感動した。

さらにすごいのは、山下さんが、絵の細部の表現の特徴を追いかけて、これらの襖絵の作者は狩野宗眼重信である、というところまで突き止めたことだ。

展覧会場にあった山下さんの解説は以下の通り。
今、これを書きながら、改めてこの解説を読んでいて、一番下まで行って、京博の元主任研究員の方だったということに初めて気付いた。

++++++++++++++++++++

さて、目玉は確かに150年ぶりの再会だったのだが、それ以外の大英博物館の日本美術コレクションも恐るべしであった。

私が好きだったのは、円山応挙の「虎の子渡し図屏風」。
絵の意味も面白かった。

虎が3匹の子を産むと、必ず獰猛な彪(ひょう)が1匹おり、他の2匹を殺そうとする。
そのため、母虎は、小虎を彪と2匹「だけ」にしないように、川を3往復半にわたって行き来する必要があった。
母虎が最初に運んだ彪を右端のもとの岸に連れ戻し、2匹目の小虎を対岸に渡している場面が描かれているのがこの絵、とのことだ。

応挙については、以前、「ごんたくれ」の長沢芦雪の師匠として書かれていて、西條奈加さんの著作「ごんたくれ」で非常に興味を持ったが、今さらながらに、やっぱり応挙ってすごいんだな、と痛感した。

長沢芦雪展 | 東京は無し | 西條奈加「ごんたくれ」はイイ
昨年秋に日曜美術館を眺めていて、引き込まれるように目が止まってしまった長沢芦雪。絵に力があって引きずり込まれてしまう。どこで観れる?大阪。だが、すぐには行けない。次は九州、遠すぎる。東京には巡回してきてくれないようだ。なんと。残念。

もうひとつは喜多川歌麿の肉筆画、「文読む女」。
歌麿最晩年の肉筆画の大作、とのことだが、すごい存在感だった。
当たり前だが、版画と肉筆画の重みの違いを実感した。

肉筆画はもちろんすごかったのだが、版画の浮世絵のクオリティも非常に高かったと感じた。

多色摺りの浮世絵(錦絵)は、初摺(しょずり、200枚といわれる)が大事で、初摺は、「絵師が立ち会ったりして彫師や摺師に指示を出し、色味や風合いを細かく調整しながら摺られることが多く、絵師の意図が最も反映された作品」なのだと、以前すみだ北斎美術館に行った時に学んだ。

多分、そういう質の高い摺りの作品が大英博物館に所蔵されることになったのだろうと思った。

すみだ北斎美術館 | 冨嶽三十六景「武州玉川」の摺りによる違いは大きかった
すみだ北斎美術館に行ってみた。墨田区がこんな美術館を持っていることを知らなかった。建築家・妹島和世氏が設計した建物が独特で美しい。ここの冨嶽三十六景「武州玉川」と以前観た「武州玉川」が大きく異なることに気付いた。初摺かどうかの違いらしい。

最後はどうでも良い話だが、ゴッホの跳ね橋を観に大阪・天王寺のあべのハルカス美術館でもらってきた展覧会のチラシと、今回、東京都美術館でもらってきたチラシが、よく見たらずいぶん違っていた、という話。

東京都美術館で今回もらったチラシ↓

あべのハルカス美術館でもらったチラシ。
本展覧会はこの後、大阪中之島美術館で開催されるので、そのチラシである。

色の違い、縦書きなのか横書きなのかの違い、、、間違い探しのクイズみたいだが。

見開きにして中を見るともっと違う。解説の仕方含めて、相当違う。

上が東京都美術館、下が大阪中之島美術館。

大阪でこのチラシをもらった時は、すぐ後に行く展覧会の予習のつもりでもらったのだが、今改めて見たら、解説されている内容も結構違うので、復習するのにとてもためになっている。

やはり、こういうところは、それぞれの美術館のキュレーターさんのこだわりがあるのだろうな。あって、当然と思う。

しかし、さすが大英博物館。日本美術のコレクションも約4万点とのことで、すごいなとびっくりした。

昔、ロンドンで大英博物館を訪れたときには、ロンドンで日本美術を観ようとは全く思っていなかったこともあり、気にも留めていなかったが、次回(多分来年?)は注意して観てみようと思う。

おわり

コメント

タイトルとURLをコピーしました