北海道ガーデン街道の旅② | 富良野〜十勝千年の森〜紫竹ガーデン〜中札内美術村庭園〜帯広

2025年7月18日~21日

前回からのつづき。

さて、新富良野プリンスホテルで目覚めた。
朝食開始の6:30に食べに行った。

昨晩の夕食でお寿司を握ってくれた職人さんが、今朝はいくらをたっぷり盛っていくら丼にしてくれた。美味しかった。

食後の函館美鈴珈琲も美味しかった。北海道で一番古い珈琲店だそうだ。

朝食の後はホテルの回りを散歩した。

ホテルに隣接するニングルテラスには、森の小人が住んでいる。今回は早朝過ぎて.テラスがまだオープンしていなかったので確かめられなかったが、少なくとも16年前に来た時は住んでいた。
たしか、当時は入口のあたりに、小人が住んでるから静かにしてね、という子供向けの説明書があったように記憶している。当時ここで妻と会話していたら、その説明書を読んだ、まだ小学生だった息子に、ここには小人が住んでいるから静かにしないといけないんだよ、と注意されたことを懐かしく思い出した笑

ニングルとは、脚本家•倉本聰氏の舞台「ニングル」に登場する、北海道の森に住む身長15cmくらいの「森の知恵者」。ニングルテラスは倉本聰氏がプロデュースした、森の中のクラフトマンの村である。

この奥に行くと、北海道ガーデン街道の8つのガーデンのひとつ、「風のガーデン」があるのだが、ここは前回見ているから行かなくても大丈夫、と妻が言うので、ガーデンの手前のゴルフ場跡のピクニックガーデン(無料エリア)を散策した。

もともとゴルフ場だったところを風のガーデンに変えていったあゆみも説明されていた。↓

この日は雨が止んでいたので、心地良い涼しさでとても気持ちの良い朝の散歩だった。
まさにゴルフ場を歩いている感じである。

さて、朝の散歩を終えたら出発だ。

まず最初の「十勝千年の森」に到着。↓
新富良野プリンスホテルからクルマで1時間半くらいだった。

芝生が美しい。

チケットを買う入口はショップにもなっていて建物も美しい。↓

風鈴が迎えてくれた。

さて、ここで「十勝千年の森」の誕生について、この森の創設者である十勝毎日新聞社顧問・林光繁さんの言葉を以下に引用する。(公式HPより

++++++++++++++++++++++
「世界で最も美しい庭」誕生の物語

「新聞は大量の紙を使う。環境破壊を毎日繰り返している仕事だ。植樹をして、森を造っていけば、カーボン(二酸化炭素)をオフセット(相殺)できる」-という志を立てたのは1987年ごろだった。

王子製紙林木育種研究所に紙と木のカーボン含有量を問い合わせた。「紙は約46%、トド松で約47%」-という回答だった。当社の発行部数で計算すると、約800haの森を造成すると、オフセットできる-と判断した。

1991年から3年かけ、清水町御影地区に約500haの土地を買った。日高山脈の主峰のひとつ、芽室岳、久山岳、剣岳を望み、水も豊富な、まさに「山紫水明」の地であった。かつて、国連大学構想の適地として北海道開発庁がリストアップしたほどの場でもあった。

2mにも及ぶ熊笹が生い茂り、人を寄せ付けない場所だったが、川のせせらぎの音には感動した。ミズナラ、ヤチダモ、赤エゾ松などの木は伸び伸びと育っていた。

熊笹を刈ると、自然に残っていた種が着床し、色々な野草が一斉に花咲き、白、黄、青-色とりどりの美しさを見せてくれた。

森林施業は予想以上の資金が必要だった。新聞社の負担軽減を考えている時、以前イギリス旅行で見たコッツウォルズ地方のガーデンを思い出した。文化度が高く、人々の癒やしにもなるガーデンは、最適と思えた。

飲み友達でもあった高野ランドスケープの高野文彰さんに相談、出来上がったのが「十勝千年の森」構想だった。高野さんの紹介で英国のガーデン設計家ダン・ピアソンさんを知り、仲間に入ってもらった。

ダンは「こんなにスケールの大きい、景勝地で、思想、哲学のしっかりしたガーデンの設計に携われるのはうれしい」と、森を歩きながら私がお礼を言う前に、逆にお礼の言葉を口にした。ダンを心から信頼した瞬間だった。

そして「世界で最も美しい庭」と、英国ガーデン設計コンテストで評価された千年の森の庭は誕生した。
+++++++++++++++++++++++

素晴らしい話であり、実際に「十勝千年の森」は素晴らしかった。

まずメドウガーデン/野の花の庭から。↓

続いて、ファームガーデンへ。↓

可愛い子たちが歓迎してくれた。↓

次はアースガーデンだ。私はこのガーデンが一番好きで印象に残った。

私の写真ではなかなか全体イメージが伝わらないので、以下に公式HPのリンクを。↓
「波打つ芝の丘が日高山脈と一体となり、圧倒的なスケールを持って目の前に広がります。人が自然の一部なる風景と、遊び心に満ちた空間を演出しています。イギリスに拠点を置く世界有数のガーデンデザイナー、ダン・ピアソン氏がデザインしました。」というガーデンだ。

Earth Garden/アースガーデン | 北海道ガーデン「十勝千年の森」/北海道 十勝 清水町
十勝千年の森は森づくりと農業に取り組んでいます。大自然を体感できる北海道ガーデン、見て食べて楽しめる今話題のキッチンガーデン、大自然の中でヤギを飼育し、子ヤギの哺乳体験なども楽しめるファームガーデン。オノヨーコら、世界トップクラス7名の現代...

しばらく進むと、坂東 優さんの作品「カムイのサークル」がある。↓
「アイヌの伝承に、十勝千年の森を流れるホネオップ川のいわれとなった鹿合戦の物語があります。十勝鹿と日高鹿の長期にわたる戦いをカムイ(神)が仲直りさせたそうです。鹿たちはその後、カムイの使者として十勝と日高を行き来するようになりました。円陣を組んだ石は鹿、中の石はカムイを表しています。」との説明書きがあった。

ちょっと暗い感じになると「ストーンヘンジ」的なものを感じる。
江之浦測候所の設立者・杉本博司さんも何かで語っていたが、石には不思議な力がある、と最近感じるようになってきた。

さらに進む。

丘の上まで歩いてくると気分が晴れ晴れとするような眺めだ。
歩くのが大変な人はセグウェイでも来れる。

これも坂東 優さんの作品「キサラのかけら」。
「昔オプタテシケ山(大雪山系石狩岳)の男神とアカンヌプリ(雌阿寒岳)の女神の夫婦喧嘩で、アカンヌプリがヤリを投げつけました。ところが、二人の間に兄弟分のヌプカウシヌプリの山神が立ちはだかったため、ヤリはその耳(キサラ)を削り落としてしまいました。大きな石は、その耳のひとかけらです。」というのがキサラのかけらの話だ。

結構歩いたのでカフェでお昼を食べながらひと休み。↓

「北海道の十勝地方は、1000%を超える食料自給率を誇る、日本でも類を見ない農の大地」とのことで、食料自給率1000%超とは知らなかったので驚いた。カフェの食事も美味しかった。

そろそろ時間だ。北海道らしいスケールの大きなガーデンでとても印象深かった。

次は、本日の2番目のガーデン、柴竹ガーデンだ。
ここは、柴竹おばあちゃんこと、柴竹昭葉(しちくあきよ)さんが、ご主人を亡くされた後、63歳の時に15,000坪の土地を購入し、ひとりで庭づくりを始められた、というガーデンである。

柴竹昭葉さんは、2021年5月に94歳でお亡くなりになられているが、当時のことについては、ここに関連記事がある。

柴竹ガーデンの前はこんな感じで畑が広がっている。↓

中に入ると綺麗な花が咲いていて、そこに美しいアゲハ蝶が顔を花の中に埋めるようにして蜜を吸っていた。

すごく自然な感じで優しい雰囲気のガーデンだった。
ガーデンの境界のところには白樺並木があり美しかった。↓

白樺並木の向こう側は一面の小麦畑だった。
この小麦色があるので、上空から見た時にグリーンとのコントラストが美しいパッチワーク模様になる。「小麦色の肌」という表現があるが、美しい色だった。

小麦畑の端の境界線もピシッと見事に真っ直ぐで美しかった。↓

柴竹ガーデンの庭に戻り、しかし、よくこんな広い土地を買ってひとりで庭を作ろうと思われたな、と改めて感心した。

上述の関連記事に書かれているのだが、『庭の管理方法がユニークである。無農薬、無肥料栽培にとどまらず無散水栽培。水やりはこの14年間、1度もしていないというから驚きだ。「どんなに暑い日が続こうとも、『お水がほしければ根っこをのばしてお取りなさい!』と草花に向かって声をかけるだけ。水やりをしない理由は、植物の能力を信じているから。93歳の花遊びに大切な地下水をどんどん汲み上げることもよいことではないから」と話すのは、”紫竹おばあちゃん”こと、紫竹昭葉(しちくあきよ)さん。紫竹ガーデンのオーナー社長だ。雑草を見つけても、花に雑草が覆いかぶさらない限り、むやみに除草はしない。花たちと雑草たちが織りなす景色が美しいと考えるからである。紫竹ガーデンの雑草は庭の重要なスタッフの一員である。』ということを後で知って、またまたびっくりであった。

さて、柴竹ガーデンともお別れの時間だが、天気もずいぶん良くなってきたので、今日のうちにもうひとつガーデンを見に行こうか、ということになり、のマルセイバターサンドで有名なお菓子の六花亭が運営している「六花亭アートヴィレッジ 中札内美術村」に行くことにした。
ここは、明日訪問予定の「六花の森」と共に、ガーデン街道の8つのガーデンのひとつとなっている。

入口を入った後のヤマモミジのトンネルにまず目を奪われた。↓
手前の石が効いている。

石の美しい断面には、詩が書かれてあった。

少し歩いたらリスが出てきた。↓

ここは、単なるガーデンではなく、美術村庭園なので、敷地内にブロンズ像が点在している。↓
それらは、今朝訪問した「十勝千年の森」の「カムイのサークル」等の作者である坂東優さんの作品だそうだ。

六花亭が1960(昭和35)年以来、六十年余にわたって毎月発行している児童詩誌「サイロ」の表紙絵を描いている真野正美さんの作品館。↓
この美術村には、他にも6つの美術館がある。

イラストレーター安西水丸さんの作品館。↓
安西さんが公募展「着てみたい北のTシャツデザイン展」の審査員を務めていたことがご縁のようだ。安西さんと言うと村上春樹の本を思い出すが、残念ながら中は撮影禁止だった。
この建物も立派なのだが、帯広市内で長年、農機具や建築・土木用品の販売を営んできた三井金物店の敷地内に1924年(大正13年)に建てられた石蔵を中札内美術村に移築したものだそうだ。

これはレストラン。↓
夕方ですでに閉店になってしまっていたが、美しい建物だった。

北海道の自然を描き続けた画家・相原求一朗の美術館。↓

これも建物がなんとも素敵なのだが、なんとこの建物は「帯広市民に長く親しまれ1995年(平成7年)4月30日に廃業した公衆浴場・帯広湯を移築したものです。帯広湯は1927年(昭和2年)に建築されましたが、屋根は時の近代建築の特徴であったマンサードトラス構造、外壁は札幌の石山より掘り出した通称・札幌軟石を積んでいます。平滑仕上を基本として胴長押、軒下蛇腹の石は細かな繰型加工を施しています。また、小叩き仕上げの影石を建物の出隅及び半月アーチ窓の要石に用いたエ法からは、当時のモダンな建築様式をうかがう事が出来ます。」とのこと。

この建物がもともとお風呂屋さんだったとはびっくりした。

まだまだ他の美術館も回りたいところだが、中札内美術村を後にした。
思っていたより見応えがあり、非常に美しい美術村庭園だった。

駐車場を出たら、また綺麗な小麦畑があった。

今日は夕食の関係で帯広の中心部に宿泊。
ビジネスホテルだけど天然温泉 白樺の湯に入れるドーミーイン帯広に泊まることにした。

今晩は、十勝のチーズとワインを楽しむという計画だったのだが、予約の時間よりちょっと早めに行っても良いか店に電話をしたら、なんと何らかの原因により出水して店が水浸しになってしまっている状態で料理の仕込みが十分に出来ていない、と言う。
楽しみにしていたので非常に残念だったのだが、予約していたお店は諦めて、急遽、チーズ・ワインと並ぶ帯広の名物「豚丼」を食べに行った。とても美味しかった。

さて、豚丼を食べて満腹になった後はデザートが欲しい、ということでホテルのすぐそばにある六花亭の帯広本店に行った。

お店の入口からして非常に美しかった。

ドーミーイン帯広に戻り、この日に巡った3つのガーデンのことを思い出しながら、天然温泉 白樺の湯に浸かり、豊かな気持ちで就寝💤

残念だが、北海道ガーデン街道巡りの旅も明日で最終日である。

つづく

コメント

タイトルとURLをコピーしました