ポーラ美術館 | カラーズ 色の秘密にせまる

2024年12月21日

12月は嫌な仕事が多くて、疲れてきたので非日常の気分転換がしたい。
考えてみたら、11月頭の琵琶湖以来、旅をしていない。
だが、泊まりの旅には行けないので、大好きなポーラ美術館にふらっとひとりで行くことにした。

「箱根の自然と美術の共生」。
これがこの美術館の基本理念だ。
大いに賛同する。

ポーラ美術館については以前にも書いたが、現時点では一番好きな美術館だ。
日経でも紹介されている
ポーラ創業家の二代目である鈴木常司氏が約40年かけて集めたコレクションがある。

まさに理念通り、この美術館の素晴らしさは自然との共生だと思う。

・美術館の建物が、人間が造った建造物(人造物)ながら、とても美しい。
・周囲の自然がいい。遊歩道も整備されていて、そこを歩くのがなんとも気持ち良い。
・美術館で会える絵が素晴らしい。
上記は順不同であり、まさに三位一体という感じだ。

日常の「美しくない」出来事に疲れてきたら、ここで「美しさ」に触れて、自分らしさを取り戻す必要がある、と思える場所である。

現在の企画展はCOLORSとのこと↑。ちょうど12/14に始まったばかりのようだ。

午前中に用事を片付けてから、東名高速を御殿場で降りて箱根の山道を駆けぬけて到着。
駐車場にクルマを停めて入り口へ↓。

正面からのこの眺めが大好きだ↓。
夏の緑あふれる景色も美しいが、すっかり落葉した景色も空が見えて好きだ。

この入り口↓を入ると、エスカレーターで下に降りるのだが、ここに来ると毎回なんともいえない気持ちになる。単にとても美しいからなのか、それとも自分にとっては、外と内の境界線ということなのだろうか。

下に降りると、正面には外の景色と融合したゆったりしたカフェがあり、右側から展示室に入るようになっている。

左側にも早速展示スペースがある↓。
ここは若いアーティストの方々を紹介するスペースなのかもしれない。

山口歴さんの作品。
越境する色彩、というテーマで、パッと見て惹かれたので写真に残した。

いよいよ展示室の入り口へ↓。

入り口に入ると、最初はなんとあの杉本博司さんのコーナーがプロローグになっている↓。

杉本さんと言えば、私にとってはまず、小田原文化財団 江之浦測候所だ。
昨年12月に初めて訪問して大ファンになった。

このプロローグのパートは写真撮影不可だったので写真に残せていないのだが、非常に興味深く、本来であればもっと時間をかけて観たかった。一応以下に多少の紹介はあるが。
https://www.polamuseum.or.jp/sp/colors/

どうやってこの作品を創ったかの動画もあって、最初のプロローグがあの杉本さんなら、もっと時間をかけて腰を据えて観るべきだった。今日は日帰りだったので、後ろの時間が気になってしまった。予習不足であった。

最初の絵は、モネの、ばら色のボート↓。
ありがたいことに、ポーラ美術館の所蔵品については写真撮影がOKのようだ。

ここから先は私が好きな作品だけ撮影、掲載している。
「モネのセーヌ河の日没、冬」だ↓。今回展示されていたモネの作品の中では私はこれが一番好きだ。

モネのルーアン大聖堂↓。

モネの、睡蓮の池↓。

以下は2022年の8月に来た時の写真↓。なんとモネの睡蓮とリヒターの抽象絵画がこのように並んで展示されていて良い意味でビックリした。こういうのを企画力というんだろうな。最後に出てくる本の中で、原田マハさんが「(ポーラ美術館は)学芸員のみなさんの企画力が非常に優れていて、魅力的なコンテンツを生かして見せる体制、アイディアもあります」と言っておられる。リヒターの抽象絵画はポーラの所蔵品で今回も展示されていたが写真撮影は不可であった。なんだか良く分からないが、この絵の前に来ると毎度しばらくじっと観てしまうので、好きなんだろうなと思う。

ベルト・モリゾの、ベランダにて↓。私はこれが今回の展示作品の中で一番好きだなと思った。
以前に観たときも、なんとも気持ちが安らかになり良い絵だなと思っていたが、今回改めて観てその思いを新たにした。ベルト・モリゾについては勉強不足で知らなかったのが、ネットで調べてみたら、エドゥアール・マネの恋人と噂された「誰よりも印象派的」とも言われた女性画家、なのだそうだ。なるほど、そうなのか、と。実際は、マネではなくマネの弟と結婚したようだが。

ゴッホの、アザミの花↓。やはりゴッホのゴツゴツした感じの筆致は好きだなと思う。
写真を見返して、今日の展示は作品がそのまま剥き出しで、額縁にガラスが入っていなかったことに気づいた。最後に出てくる本の中で、元画学生だったヤマザキマリさんが、額縁にガラスが入っていると反射してしまうので模写がしにくい、と語っておられて、なるほど、と思い、そういえば、今日の展示は額縁にガラスが入っていなかったな、と思った次第。初心者なのでいろいろと学ぶことが多くて楽しい。

アンリ・マティスの、オリーブの木のある散歩道↓。
以前もここで観たことがあるような気がするが、定かでない。

アンリ・マティスの、リュート↓。
これは大好きな作品だ。観ているとなんだか楽しい気分になってくる。

さらにマティスの切り絵、ジャズ↓。
これは今回も近くに寄って観たが、まさに切り絵であった。マティスが大病を患った後、絵筆が持てなくなり、切り絵の世界に入ったということは知っていたが、改めて、すごいなと思った。

以下↓はご参考まで。この展覧会には行けなかったのだが。

https://sumau.com/2024-n/article/980

次は、隠された色彩、というタイトルのコーナーで、そこにピカソの「海辺の母子像」が展示されていた。この絵はポーラの所蔵品ながら撮影禁止だった。残念。

最初にこの絵をここで見た時は何だか不気味な感じでピカソのイメージではないななどと思ったのだが(「青の時代」などというものを知らなかったので)、何故だかすごく惹かれて、なかなかその絵の前を離れられなかったのを覚えている。今ではとても好きな絵になった。

隠された色彩というタイトルになっているのは、この絵の下に別の絵が描かれていることが分かったからで、詳細は以下をご参照のほど。

ポーラ美術館所蔵の名画ピカソ《海辺の母子像》に新事実! 絵の下から仏新聞発見
パブロ・ピカソ(1881-1973)が20歳の時に描いた「青の時代」の代表作《海辺の母子像》の絵の下に、新聞紙の貼付けが発見されたことを、所蔵先のポーラ美術館(神奈川県箱根町)が6月5日都内で記者発表しました。

これは↓「自由な泳ぎ手」と訳されるヴォルフガング・ティルマンスのフライシュヴァイマーという作品。「カメラも複写体もネガも使わず、暗室の中で光を巧みに操りながら印画紙を露光させてドローイングを行い、流動的なパターンを生み出した写真作品です。作品の色調は、カラーフィルターを使った独自のプロセスによって生み出されています。」とのこと。

この写真では分からないが、そばに寄って観ると初めて体験するなんとも不思議な世界だった。

最後は草間彌生さんの世界↓。
《無限の鏡の間 ―求道の輝く宇宙の永遠の無限の光》 2020年 作家蔵、とのこと。
外見は白い部屋。そこに並んでいる人たちがいる。若い男女のカップルか、若い女性の2-3人くらいのグループで、おっさんひとりは私だけでちょっと恥ずかしかったが、ここまで来て観ないわけにはいかない。5-10分待った。

タイマーを持った係員の人が白い部屋の扉を開けてくれて前の人たちと交代だ。中で30秒だけ観れる。多分、防音室になっているのではないか。

鏡を使ってこの世界を創っていることは分かったが、あっという間に終わってしまった。想像以上に非日常の空間で、もっと長い間、ボーッとこの世界に浸っていたかった、という気持ちだった。

聞こうと思って忘れてしまったのだが、この作品はどうやってこの会場に再現したのだろうか、組み立て直すのかな、普段はどこに置いてあるのかな、などと考えてしまった。

ここから先は企画展とは別のポーラ美術館コレクション選だ↓。

セザンヌの、プロヴァンスの風景↓。
プロヴァンスはまた行きたい憧れの場所だ。
以前、あそこに行って、ああ、印象派の絵のあの光の感じってこういうことなんだなということが良く分かった。百聞は一見に如かずということか。

セザンヌの、アルルカン↓。なんとも惹かれる絵だ。
頭のてっぺんと足の先が切れているところが、どうにも気になってしまう。

ドガの、スパニッシュ・ダンス↓。
以前も観ていいなと思ったが、今回観てもやはりいいなと思うのは好きなんだろうなと思う。

ガレの、草花文耳付花器↓。
亡くなった母がガレが好きだったので、諏訪湖のほとりにある北澤美術館までクルマで連れて行ったことを思い出した。今にして思うと、あれが母と遠くまで出かけることが出来た最後だった。

今回の新収蔵だが、写真撮影は不可だった↓。

ゆったりと回って少し疲れたのでカフェで庭を観ながらひと休み↓。

実は、絵を楽しむ前に遊歩道を巡って庭を楽しんできた。
駐車場出口の横にある遊歩道入り口↓。

美術館の入り口の下を抜けていく↓。

整備された遊歩道↓、歩くにはスニーカーで十分。ヒールだとちょっと難しいかも。

落ち葉の匂いというか、腐葉土的な匂いが気持ちいい。

鳥の声を聴くのは朝早い時間が良いと思う↓。清々しい気持ちになれる。

遊歩道の中にもいろいろ作品がある↓。

こんなワンコもいる↓。

この子も可愛い↓。

すっかり落葉して初冬の風景だが、足元には秋の紅葉の風情が残っていた↓。

木肌が茶色く見えるのは私の好きなヒメシャラだ↓。

ブナの大木もある。上の枝振りが英国のハリーポッターの映画のようでおどろおどろしい↓。

遊歩道から戻ってくるとカフェが見える↓。

再びカフェに戻った↓。

写真を撮るのを忘れたが、ホットサンドとホッとコーヒーでひと休み、砂糖もコースターも美しい↓。

最後にショップで3冊の本を買ってしまった↓。

一番面白そうだなと思って最初に読み始めたのは、原田マハさんとヤマザキマリさんの対談の「妄想美術館」だ。この中で、尊敬する原田マハさんも「初心者の方におすすめしたいのは、まずポーラ美術館」とおっしゃっている。日本10大美術館にもちゃんと入っていた。
だからこれらの本がショップに置いてあるのだと思うが、大体、美術館で買った本にハズレはない、というのが今までの私の経験則だ。
ヤマザキマリさんは、以前に講演をお聞きして男前な感じのカッコイイ方だなと思っていたが、その思いを新たにした。

外に出たら雨が降っていた、山の天気は分からない。

駐車場まで歩くのに傘を貸していただいた。
傘にもロゴが入っていてカッコイイ。

やはり思い切って来て良かった。
美しさに触れてスッキリ出来た。

また来ます。

おわり。

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