2025年5月20日
ニュースを見ていたら、東京国立博物館(東博)で開催されている、この展覧会に関連する調査の中で、蔦屋重三郎がプロデュースした喜多川歌麿作品の中でも特に重要と思われる作品「婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘」が約43年ぶりに確認され、5月20日(火)より本展にて特別公開することが決まった、とのこと。
もともと行こうかどうしようかと思っていたが、ちょうど5/20は仕事も休めるので、これは神のお導きに違いない、と行くことにした。
また上野にやってきた。
最近観に来た相国寺展とミロ展の看板に並んで本展の看板もある。↓

東京国立博物館(東博)に来るのは初めてと思う。子供の頃に来たかもしれないが覚えていない。
本館は非常に立派な建物である。↓

この敷地の博物館全体がいくつかの建物で構成されている。
我々が目指すのは平成館だ。天皇陛下のご成婚を記念して平成11年(1999)に開館したのだそうだ。

平成館の前に来たら、森鴎外総長室跡なる説明書きがあった。↓
森林太郎(鷗外)は作家、軍医として著名だが、最後の公職は国立博物館の前身である帝室博物館を統括する総長だったことを知った。大正6年(1917)末に帝室博物館総長に就任、翌年初めから本格的に仕事にかかり、同11年7月に在職のまま60歳で亡くなったのである。勉強不足で知らなかった。
2012年には博物館長としての森鴎外についての展覧会があったようだ。

平成館に入ったら2階に上がる。↓
2階は特別展専用のスペースで、1階は考古展示室なのだそうだ。
ここから先は写真撮影ができない。

後半のスペースに入るところには、耕書童の屋号がかかっていた。
今回のNHKのドラマは見ていないのだが、蔦屋重三郎という人のことを知って、てっきりレンタルでお世話になってきた「TSUTAYA」の名前の由来は蔦重から来ていたのか、と思っていたのだが、調べたら、どうも違うらしいことを知って、ちょっと肩透かしにあったような気分だった。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社のプレスリリースには以下の記載がある。
■蔦屋重三郎とTSUTAYAについて
CCCの創業者である増田宗昭(現・CCC取締役会長)は、祖父が営んでいた家業の屋号が「蔦屋」であったことから、1983年に開業した一号店目の店名を「蔦屋書店 枚方店」と命名しました。その後、江戸時代を代表するプロデューサー蔦屋重三郎のことを知り、TSUTAYAも現代のプロデューサーになれるように、ならいました。
ただし、『「蔦屋」「耕書堂」のデザインはカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の商標です。』との説明もあり、今回、「耕書堂」の屋号をデザインしたオリジナル商品の販売を開始したとのことである。

出口のところに写真撮影可能な巨大な「ポッピンを吹く娘」があった。↓
今回はこれを見たくてやってきたわけだ。
その昔、まだ私が子供だった頃の記憶では、この絵は「ビードロを吹く女」と呼ばれていたように思う。ビードロという言葉がなんだかおどろおどろしい感じだったので記憶に残っている。調べると、「ビードロを吹く娘」だったり、「ポッピンを吹く女」だったり、今回のように「ポッピンを吹く娘」だったり様々なようだ。

写楽も並んでいた。↓
写楽については疑問があった。現代においてこんなに有名な絵師が、なぜわずか10ヶ月で姿を消してしまったのか?という点だ。

この疑問については、事前にNHKの日曜美術館で予習をして大分理解が深まった。
今回、実際に展示されていた作品を見て、写楽登場時の豪華な大判の作品(全部大判で28枚)と、その後の、二期(大判8枚、細版30枚)、三期(間版11枚、細版47枚)、四期(細版のみ11枚)の作品を比べると、特に三期以降は明らかにインパクトが薄れているように思ったのだが、これは狙い通りにヒットしなかったのでジリ貧になってしまったということではなく、本当に蔦重の最初からの戦略だったのだろうか?
最近、三期の細版が新たに発見され、それが今までの中で最高の品質で、三期の作品は従来の認識より使用されていた色の種類も多く、しっかり作られた作品で、安かろう悪かろうというものではなかったと分かったらしく、ジリ貧になったわけではないという論拠にもなっているようだ。
ただ、いずれにしても、10ヶ月の間に134枚もの絵を写楽に描かせたのは、普通では考えられないようなことで、蔦重が圧倒的な量をもって、競合を圧倒して市場を独占し、版権を獲得しようとした意志の表れだったとの日曜美術館での大和文華館・館長の浅野秀剛さんの解説は非常に勉強になった。(だが、結果的には失敗に終わり、蔦十は役者絵から完全撤退、その二年後には死去、写楽も筆を折ることになった。)
最後のコーナーには大河ドラマのセットを模したスペースがあったり、番組で使用された小道具の展示なども行われていた。↓


特に衣装デザインについては、以下の解説があり、とても興味深かった。↓
「衣装デザインはキャラクターデザインを担います。
様々な階層のユニークな登場人物たちを、襟元の表情から始まり、色合い、好む図柄、着付けすべてに現代の人がカッコイイと思えるような江戸文化の粋と意気を華やかさに陰影をつけた構成で描きました。
参考に紐解いた浮世絵(歌麿・写楽・清長)、風俗図屏風等から、江戸っ子たちの着方、在り方が生き生きと伝わってきます。着物の持っている多彩な表現、江戸裂を含んだ小紋、縞、大腿な友禅模様など映像的にもわくわくする色彩世界を楽しんで下さい。
大河ドラマ「べらぼう〜高重栄華乃夢断〜!衣装デザイン担当 伊藤 佐智子」

外に出てきて本館を見て、やはりとても立派な建物だなと感心した。↓

本館の脇にある大きな木は、ユリノキ。↓
横にあった説明書きによると、「モクレン科ユリノキ属| 北米原産の蜜源樹、春、チューリップによく似た花が咲く」とのことで、この木は「明治8、9年頃渡来した30粒の種子から育った1本の苗木が明治14年に現在地に植えられたといわれ、以来博物館の歴史を見守り続けている。東京国立博物館は、時に「ユリノキの博物館」「ゆりの館」などといわれる。」ということである。
ということは樹齢150年ということになる。素晴らしい大木だ。

チューリップによく似た花はすでに終わってしまっていた。
この木の英語名は Tulip Tree なのだそうだ。

後日、郵便を出そうと思って、切手を探していたら、こんな浮世絵切手が出てきた。↓
調べてみたら、左上の2枚は、2017年9月6日に発行された「【浮世絵シリーズ】第6集 諸国名所と江戸美人」の一部のようだ。
。なぜこんな切手がウチにあるのか?自分で買った覚えもない。
どうやら一年前に亡くなった母が持っていた切手らしい。形見というほどのものでもないが、綺麗だし、このまま使わずに取っておこうと思う。

先日もMOA美術館で北斎の「冨嶽三十六景」の世界に浸って来たが、やはり浮世絵は美しいな、こんな文化のある日本に生まれて良かったな、と思った。感謝である。
おわり
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